「いつかの君へ」

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今年で近コンを卒業する、近畿大学4年のあかりといいます。

とうとうこのコラムを書く日が来てしまったか、と年月の流れの早さに驚く。以前からよく言われていることだが、時の経つ早さは重ねた年齢に比例するというのはあながち間違いではないだろう。まだ二十二だが、すでにそれを実感している。このまま三十、四十となった私は日々をどのように過ごし、どう感じているだろう。思い馳せてみると、やはり今この時間がいかにかけがえのないものであるかということに気付かされる

今から書くことは自分でもカタい内容だなーと思うが、卒業する、となればどうしても書いておきたくなったものだ。時間のある人はぜひ読んでみてほしい。

私は高校を出るまで、ずっと聾学校の中で育ってきた。家族の転勤などで何度か学校は変わったが、いずれにしろ手話で通じ合う友人がおり、環境があった。

「分からない」ということには無縁であった。ああ、分からなかったことが一度もないということではない。あの時は、分からなければ聞ける。そして答えを得ればすぐに「分からない」を解決できる状況にあったということだ。

さて私たち聴覚障害者が最もつらい状況とは何か。
それは「分からないことが何なのか分からない」状況である(と私は思っている)。

まさにその難題に、私は大学生になって初めて直面したのである。ここではさわりだけ書くが、私が入学した当時(2016年度)の近畿大学では、聴覚に障害のある学生への支援方法が定まっておらず、理解も進んでいなく、情報保障体制も整っていなかった。それで随分と苦労したものである。

あ、きちんと現在のことも記しておく。今(2019年度)近畿大学東大阪キャンパスでは「UDトーク」というアプリを導入してほぼ100%の情報保障を提供できる体制を整えているので、近畿大学を考えている聴覚障害学生は安心して受験してほしい。

さて話を戻そう。
自分が一体何を分かっていないのか分からない、ということがこんなにもつらいことか、と私は打ちのめされるような気持ちであった。しかし、近コンの皆にそれを進んで打ち明けよう、支えてもらいたい助けてもらいたいとは思わなかった。それはなぜかというと、自分の置かれている現状への怒りや失望などが、私を奮い立たせる動力源となっていたからだ……と、まとめるとすればこんな感じの理由か。

そうして私は当時のことをつまびらかに話すこともないまま近コンを卒業することになるのだが、心残りであるとか、後悔であるとかは全くない。

近コンは、表立って私を支えるということは無かった(私がそれを望まなかった)が、情報保障に関する悩みを一時的にでも忘れられる、コミュニケーションに不便を感じない、そんな優しい場所と時間と人を提供してくれた。
踏み込みすぎず、程よい距離感を保って、一人あがく私を見守ってくれた。私はそれがむしろ心地よかった。

これまで近コンに属しただろうみんなとはちょっと違う役割を私は近コンに求めたのだが、きちっと近コンはそれに応えてくれた、それに私は救われたのである。

思うに、近コンとは自分と同じ聴覚に障害がある仲間と出会える場所であり、手話でコミュニケーションできる場所であり、そして何といおうか、聴覚障害学生同士の結束を強める場所でもある……しかし「これだけではない」ということが一番重要な点ではないだろうか。

近コンはとても懐が広くてやわらかくて、大きな可能性を秘めているはずだ。近コンに入る人の数だけ異なるニーズに応えるだけのポテンシャルがあるのだ。会員の数と同じだけ近コンの存在意義や理由、役目が存在する。(まあ多様なニーズに応えるという行動自体、組織として正常に機能するための多様性を維持するためのものだという解釈もできるし)
近コンという場に、その場を構成し得る人々らがそれぞれの目的や願いを委ねてこそ、近コンは在るのだ。きっと。
みんな、たくさんのことを近コンに期待し続けてほしい。
期待することをやめたなら何が起こるか。期待されなくなった近コンは何事も成すことができない。枠組みだけを残し、中身がごっそりと消え去るであろう。形骸化……というやつだ。

そうならないためにも、ああしてほしい、こうしてほしい、ああした方がいいんじゃないか、こうした方がいいんじゃないか……という会話や意見や考えをだ、マジトーンで言うぞ、大事に大事にしてほしい。とても貴重なんだ。(それらが一番よく見えるのは総会だったりする。行っておいて損はないぞ!)

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多くを近コンからもらった。

多くを近コンに期待した。

たくさんの友人や思い出をもらった。

たくさんの期待と願いを近コンに託した。

近コンに入ってよかった、と思う。

近コンはたのしかった、と思う。

この気持ちに嘘偽りはない。


だからこそ、十年後、二十年後、三十年後も聴覚障害学生を受け止めてくれる場所として残り続けてほしいと思うのだ。

だから後輩のみんなにはたくさんのことを近コンに期待してほしいし、その実現に向け考えたり行動してほしいと思っている。これが私の率直な気持ち…です!はい!近コンをね、どうか好きでいておくれね。

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さあ、もういい加減長くなったし切り上げなくてはならない。

ホンマお世話になりました。もう学生じゃなくなることが、ほんとに冗談抜きで名残惜しいんだけど、そろそろさようならを言わなきゃと思う。
ありがとう、さようなら。
あなたに幸あれ、近コンに幸あれ。
ずっと応援しています。